気球の燃費を考える

c0038946_21294319.jpg


最近のプロパンガスの価格高騰により、燃費を気にする話がある。それについて以前から考えていたこと、普段考慮しながら飛んでいることなどをまとめてみた。



熱気球の燃費の優劣は、様々な条件で構成されるが、バーナーの燃焼効率を一定とした場合、ほとんどが球皮によりその条件が変わると言える。球皮における燃費に影響を与える条件はだいたい以下のような要素が上げられる。

・ 開口部からのヒートロス
・ 球皮が外部と接触することによる冷却
・ コーティングや縫い目、リップの隙間などからの空気漏れ



それぞれの要素について検討してみる。


開口部からのヒートロスは、バーナーで発生させた熱を外に漏らすことなく球皮内部にどれだけ導くことが出来ているかという部分だ。気球の影を見ているとバーナーからの熱による陽炎のような物が、開口部から外に逃げていくのを見たことがあるパイロットも多いだろう。アレが問題なのだ。その意味で、バーナーから開口部までの距離は出来るだけ近い方がよい。さらに、深めのスカートを装備していると、より熱が逃げにくく、燃費効率に貢献する。


球皮が外部と接触することによる冷却は、同じ体積の気球では、その表面積が出来るだけ小さくなることが望ましい。その意味で最小の表面積で最大の体積が得られる形状が一番燃費がよい気球の形状といえる。カボチャと呼ばれるでこぼこした気球より、スムースが良いし、レーサーと呼ばれる縦長の気球より丸っこい気体の方が燃費がよい。滞空時間記録を作る様なフライトに使用する気体が、内側にマイラーなどで2重球皮にして効率を良くしているのも、この外部と接触する球皮からの冷却を極力抑えるという考えに基づいている。計算上もこの接触冷却が一番大きなロスのように思えるのだが。


コーティングや縫い目、リップの隙間などは、良質のコーティングを施され、通常の縫製であれば、その多寡はあまり関係ないようだ。なんせ、球皮内部と外部との圧力差はそれほど大きくはないからだ。ただ、劣化したガーゼのようなコーティングは論外だが。また、パラシュートリップは小さい方が効率がよいのは言うまでもないが、リップアウトしたときの効果も小さくなるという二律背反の部分もある。燃費を考えるのであれば、リップ直径は小さめの方がよいだろう。


球皮に続いてバーナーの燃焼に関して燃費を考える

バーナーはコイルで急激に気化させたプロパンと空気を混合させて燃焼させる器具で、完全燃焼出来ることが最大のカロリーを発生させる。そのために多数のノズルからガスを噴出させより完璧な混合状態で燃焼させられるバーナーが燃費がよいバーナーになる。以前のバーナーは大きな爆発音に近い燃焼音を響かせていた物があるが、この種のバーナーは適正な混合が行われにくく、爆発的な乱れた燃焼を起こしている。そのため、放出された燃料を最近のバーナーに比べて完全に燃やし切れていない物が多い。この点では、音の静かなバーナーは概ね燃焼効率の良いバーナーだったりする。

また、バーナーの燃焼効率は、燃料圧力によっても変わる。低すぎる圧力ではうまく混合が行かず、燃焼効率が落ちるし、高すぎる圧力では、ノズルから気化しきれない半分液体状態のガスが噴出され、同様に燃焼効率の低下を招く。適正な圧力で初めて適正な燃焼が起き、効率の良い燃焼になる。



では、燃費の良い飛び方とは?

機材が同一でも燃費は飛び方で大きく変わってくる。まず、外気温と球皮内温度の差を出来るだけ小さくして飛ぶことが、球皮が外部から冷却される率を小さくする。その意味で、気球のロード一杯で飛ぶのではなく、余裕を持った加重で飛ぶのが肝心になる。球皮内温度を110度にして飛ぶのと80度で飛ぶのでは燃費は大きく異なる。

ロードチャート一杯で飛ぶのはとても燃費効率を悪くするし、球皮の劣化も早く進んでしまうことになる。長時間のフライトをするとき、パイロットはどうしてもロードチャート一杯に燃料を積みたくなるが、これもある面考え物かもしれない。離陸重量が軽い方が、低い温度で飛行でき、燃費効率はよいからだ。その上、多くのシリンダーを積んでいると使い終わった後のシリンダーは単なるバラストにしかならず、燃費効率を低下させるからだ。第二次世界大戦中の零戦が、燃費効率が良く長い時間の長距離飛行を可能にしたのは、軽いロードの機体だったことが最大の理由で、その考え方を少し取り入れてみるのも良いのではないだろうか。また、車で燃費を良くするために、無駄な物を車から降ろすことが良く言われるが、まさにそれでもある。

同じ機体で、同じ乗員重量、同じ飛行をして、20キロシリンダー4本で飛べる時間と、6本で飛べる時間は、ほとんど差がないかもしれない。6本搭載した機体は離陸直後その重さのため急激に燃料を消費する、後半でも空になったシリンダー2本分の重量が常にデットウエイトになって燃費を悪くする。その結果、同じぐらいという結果になるのだが。


また、気球を上昇させるとき、球皮内温度を上げすぎず下げすぎず、こまめにチェックすることも重要だ。車で言えば、アクセルをゆっくり一定の間隔で踏み込むことが燃費に貢献するのと同じ原理だ。急加速、急減速が燃費を悪くするのと同じ事で、急上昇、急降下も同様に燃費に影響する。もちろんフライト中それが必要なこともあるので、その時にバーナーの炊き方を正確に温度管理しながら炊くのが燃費にも重要だし、球皮ダメージを与えないためにも重要になる。

また、上昇時、連続してバーナーを炊くのよりも断続させて球皮全体が暖まるような対流をイメージしていると、同じ燃料で、より効率よく上昇させられるし、連続して炊くことにより天頂部付近だけ急激に温度を上げてオーバーヒートするようなことを防げる。車で言えば、エンジンの空ぶかしや回転数を上げすぎないのと同じことだ。

燃費効率を考えるのであれば、正確な球皮内温度計は絶対条件になると思う。球皮を長持ちさせるためにも必要な条件だ。

また、リップは極力使わないのが燃費にはよい。これは車でブレーキを踏まない方がよいのと同じ事だが、こればかりはフライトの中で不可避な部分もあり、何とも言えない部分だが・・・気持ち的に無駄なリップ操作は避けた方が良いぐらいのイメージを持っているのがよいのではないだろうか。


色々な要素はあるが、車の燃費向上の方法を気球の飛び方、機材に重ねて考えてみるとその方法は自ずと見えてくるのではないだろうか。
[PR]
by airspace_balloon | 2011-03-10 21:32 | 気球技術系
<< ガス圧の変化で燃費が変わる理由 熱気球でブタンガスを使用すると・・ >>